2つの村

 

ここに2つの村がございました。

上の村と下の村、

上の村では農作物がよく育ち、多くの家々ではこんにゃくいもを栽培しておりました。

下の村には他の村から沢山の豊富な物資が集まって参りました。

ですが、この2つの村は仲が余り良くなかったんです。

上の村は他の村へ参りますときには必ず下の村を通らなければならず、

その時には通行料を取られておりましたし、

下の村では、上の村から水が流れて来ず、米の栽培ができませんでした。

そんなわけで、2つの村の者が顔を合わせますと必ず争いが生じておりました。

 

ところがね、この2つの村の人間はとても祭が好きでございました。

ですから、どこからともなく笛の音が鳴り出しますと、上の村の人も、下の村の人も

野に出て手に手を取り合い、笛の音に合わせて一晩中でも踊り明かしました。

ぴーぴーひゃらら ぴーひゃらら、

どんどんどこどん どんどこどん、

ぽんぽぽんぽ ぽんぽん ぽぽん、

元々が陽気な人達ばかりでございましたから、それは本当に陽気に踊っておりました。

 

と、そこに神様が現れ出でましてね、

「こぉれ 皆の者よ、ワシは神様であるぞ、

ワシはお前達が争う様子を悲しみながら見ておったが、

お前達はこのように本当は仲が良いではないか。

下の村の者は他の村から集まったものを上の村にまわしてやらず、通行料さえ取ろうとする、

その乾き切った心が、水を回して貰えないといった現象となって現われたのだ。

上の村の者は下の村に水を回さない、その狭い心が通行料や物資の不足という現象となって現われたのだ。

ここに鏡が在る、これは人の心を映し出す鏡である。霊験あらたかな鏡であるぞ。

これをお前達に授けよう。

お前達2つの村が仲良くして、この鏡を大切に守り祀れば2つの村は富み栄えるであろう。」

こうして神様は去ってしまわれました。

 

その後、2つの村は共に助け合い仲良くするようになりました。

この2つの村が富み栄えましたことは申し上げるまでもないことでございます。