神の社
いつのことだっただろうか、大きな愛に包まれていたのは。地球という、ただひたすらに青い生命体に守られ、豊かに暮らしていたのは。
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森は豊かに茂り、そこで動物達は果実を取り、木の実を集め、草の根をかじり、穴を掘り身を横たえ、何も恐れることなく安心して過ごした。
大地はあたたかかった。大きな池には何種類もの動物達が争うことなく水を飲んだ。
何万年もの平和な長い年月が何一つ変わることなく過ぎ行き、動物達はその命を子孫に引き継いだ。
幾つもの仲間の魂が地祇となり、地を守り子孫たちを教え導いた。
ある時、激しい雨が降り、大きな雷が鳴り響いた。その雷は森の一番大きな木に落ち、その木は真っ二つに断ち割られた。
人が現れた。
人は木を伐採し、森を切り崩し家を建て、道を造り、街を造った。
人が溢れ、ゴミが増え、水が濁り、空気が汚れ、度重なる水害や山崩れを引き起こした。
動物達は追い遣られ、人を憎んだ。それは今まで経験したことのない感情であった。
憎しみは積み重なり、凝集し、ある一つの形を現した。
紐のように見えて、長いもの、頭が八つで、尾が八つ、
動物達はこの得たいの知れぬ塊に「すそ」という名前を与えた。
「すそ」は人間達に多くの災いを引き起こさせた。
多くの人が病を患い、命を失った。
ある時、この森に社が建てられた。
「すそ」を鎮めるために建てられた神様の社、
人は、この社に、赤い玉と、鏡と、剣とを祀り、多くの物を供え、「すそ」と動物達の魂を心を込めて供養した。
赤い玉は「すそ」の目、鏡は「すそ」の魂、剣は「すそ」の胴。
人は、動物達と共存することを覚えた。
動物達もそれ以降、人に憎しみを持つことは無くなった。