すその男
永い歳月が過ぎ、人々は「すそ」のことも、神の社のことも忘れ去った。
社は荒れ、人の心も荒みきった、そんな時、
すそが現れた。
すそは人を飲み込み家屋を壊す。
ここに、すそのことを知る勇敢な若者がいた。
彼は、すそのことも、神の社のことも、語り部である婆から聞いていた。
彼は神の社を探し出し、荒れ放題のその社に祀られていた鏡と剣を手に取り、
すそを退治する手立てを村人と話し合った。
大きな樽に酒を入れ、その酒を醸してすそをおびき出す。
酒に酔わせ、鏡で目を眩ませて、隙を突いて剣を刺す。
その作戦は功を奏した。
若者は「すその男命」(スソノオノミコト)として称えられた。
(「すそ」:一部の地方で呪詛のことを「すそ」と云っておりました。)